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徒然なる妄想の日々
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今週末は夏コミでしたね。
参加された皆様お疲れ様でした。
私は暑さで軽く引きこもり状態です・・・
出かけようという気力をことごとく削いでいく猛暑に負けっぱなし状態。
それでも昨日は地元で某イケメングループのイベントがあったので、タダだからと見に行ってきました。
久しぶりに某元正義の味方くんと現悪役くんを生で見れて、ちょっとパワーを頂きましたvv

以下は、以前にちょこっと浮かんだバンドパラレルネタが意外と発展したので、ちょこっとカタチにしてみたものです。
全くのパラレルもので、一騎と総士、甲洋、剣司、衛の5人が現代日本でバンド活動してる設定です。
しかし考えるほど、約一名以外げーのーじん向きじゃないタイプのメンバーな気がする・・・(^^;)




ダンッ!とドラムの音が空気を切り裂いた。
狭いライブハウスにみっしりと詰め込まれた観客の熱気と、舞台上を照らす眩しいライトの熱量に晒されて、身体が灼かれるようだ。
まるで体中が心臓になったみたいに、ドクドクと耳元で鼓動が鳴る。
頭が真っ白になっているのを自覚する。
落ち着け、と言い聞かせるより先に、安定したドラムのリズムが耳元の鼓動と重なった。
――大丈夫。
そう、言われた気がした。
激しいリズムを刻んでも、不思議と優しく人を安心させる衛のドラム。
いつも控えめで、さり気なく後ろから支えてくれる。
けれども本当は誰よりも果敢で、絶対に逃げない勇気を持っている。
そんな衛の性格が、そのまま現れた音だと思う。
ふっと身体から力が抜けた時、勢い良くかっ飛んで行く弾丸のようなギターの音が重なった。
ステージのギリギリまで身を乗り出して、観客を巧みに煽りながらギターを掻き鳴らす剣司の姿が見える。
目立ちたがりで、お調子者の剣司にはうってつけのポジションだ。
剣司はいつだって、率先して観客を盛り上げてくれる。
どちらかというとそういうパフォーマンスが苦手なメンバーが揃っている中で、剣司の存在は本当に貴重だ。
彼はいつだって、自分の調子が悪い時だって、そんなことは全く表に出さずに観客とメンバーのムードメーカーになってくれる。
本当は誰よりも仲間想いで、優しいんだと知っている。
勢いの良いギターの音につられる様に思わず逸りそうになる気持ちはけれど、安定したベースの音が静めてくれる。
落ち着いてリズムをセーブし、全体のバランスを支えてくれる甲洋のベース。
メンバーの意見が割れた時、間に入って上手くまとめてくれる柔軟さと冷静さ。
いつも穏やかな態度で緩衝材の役割をしてくれる甲洋の存在がなかったら、こうして前に進めていなかっただろうとしみじみ思う。

歓声が、不意に小さくなる。
細かいビートの上を滑らかに流れていくのは、不思議と哀愁のあるキーボードの旋律。
透き通った水のようなその音色に、観客が聞き入っているのが分かる。
不思議だ、と思う。
リズムも、ビートも、ドラムもギターもベースの音も何一つ変わらないのに。
何一つ変えず、抑えず、けれど違和感なく、吸い込まれるような清冽な旋律が溶け込んでいく。
一つに、なる。
(・・・総士)
それが彼の『音』だ。
彼だけの、音楽だった。

――総士は、音楽を総べる神様だった。



「一騎。お前の『声』が必要なんだ。」
1年前、久しぶりの挨拶も何の前置きもなしに、唐突に総士はそう言った。
7年ぶりの再会だった。
7年間、一度も顔を合わせることなく連絡をとることもなく、けれどもずっと重石のように引きずり続けた罪悪感があった。
顔を合わせることを何よりも恐れていたはずなのに、実際に会ってしまえばもう、逃げることなど出来なかった。
「・・・声?」
半ば、予感はあった。
遠見に頼み込まれて一度だけ、オーディション用のデモテープのバックコーラスをしたことがある。
あのテープを総士は、聴いたのだろうか。
「ああ。今度結成するバンドに、ボーカルとして参加して欲しい。」
「そんな・・・オレには無理だよ。」
本当は、遠見に頼まれた時も最後まで断るつもりだった。
だけど、身体の弱い友人の為にと拝み倒されて、嫌だと言い通すことが出来なかった。
一度だけだからと念を押して、それでもスタジオに入れば気が滅入った。
自分には、そんな資格はないのに。
歌うことも、楽器を弾くことも、音楽に関わること全てが。
後悔しかなかった。
後悔は常に、赤い色に染まっている。
赤く染まった、幼い総士の姿。
真っ赤な血を流す彼の側に立つ自分の手もまた、赤い。
砕け散ったバイオリンの破片と、空気を切り裂く悲鳴。
痛い、と泣いている総士の前から、そうして自分は逃げたのだ。
何も言わず、振り返ることなく。
それからすぐに、総士は父親の仕事の都合だとかで海外へ引っ越していってしまった。
責められることなく、謝ることすら出来なかった、7年の空白。
――オレは、あいつから「音」を奪ってしまったのに・・・
総士は、どんな気持ちであのテープを聴いたのだろうか。
「お前にしか、頼めないんだ。」
だから、総士に真っ直ぐ見据えてられてしまえば、拒むことなど出来なかった。
「本当に・・・オレにできるのか。」
あの時の総士の顔は、今でもよく覚えている。
ほんの一瞬、遠いいつかの記憶のように綺麗な微笑が過ぎって。
「僕を、信じろ。」
神様のように、そう言い切った。



空気が震えているのが分かる。
ステージと観客が、一つになって混ざり合う。
境界のない世界で、総士の音だけが導いてくれる。
もはや不安も緊張も消えていた。
一つに混ざって、一体化する、その快絶。
それを知ってしまったから。
(・・・3,2,1)
前奏が終わるタイミングで大きく息を吸って。
溢れ出すのは、もう自分の「声」ではなかった。
体全体が一つの楽器のように、総士の音に共鳴する。
あの時、総士に誘われた時に、心に決めた。
お前の音を奪ってしまったオレを、それでもお前が必要としてくれるなら。
オレはお前の「音」になる。
だからオレは、お前の為だけに歌うんだ。
そうして今度こそ、お前の「音」を守るから。

狭いライブハウスは、一番後ろの観客までよく見える。
演奏に熱中する観客たちを余所に、出入り口の横に悠然と腕を組んで佇んでいる男の視線は、嫌でも一騎の神経に引っかかってくる。
(・・・あいつ)
綺麗にセットした金髪の下は、サングラスに覆われて顔は見えない。
それは直感だった。
リズムに乗ることも演奏に聴き入ることもなく、ただじっとステージ上を注視している。
いや、正確にはステージ上の、総士の姿だけを捉えているのだ。
自然なパフォーマンスでさり気なく、男から総士の姿を遮る位置に移動する。
そうして初めて、男と視線が合った。
まぎれもなく敵意のこもった、冷たく鋭い視線だった。
(お前なんかに、)
その視線を真っ向から受け止めて、撥ね返す。
(総士は、渡さない)
誓ったのだ、総士を、総士の音を守ると。
強い意志を、刃のように歌に託す。
祈りにも似た想いは、どこへ届くだろうか。
けれども知っている。
届いて欲しい先には、決して届かないことを。
本当は、知っている。
総士が必要としている『声』は、自分ではないことを。
もう歌えなくなった、総士のたった一人の大切な妹。
気管支を病んで療養中の彼女の身代わりでも構わない。
それでも今、自分はここにいる。
総士の為に歌える場所にいることだけが、全てだった。


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